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【解決事例1】新しい自分として生きるために!「やむを得ない事由」「正当な事由」~氏・名の変更~

2022年4月21日

新しい自分として生きるために!「やむを得ない事由」「正当な事由」~氏・名の変更~

【依頼者】

Aさん(20代、女性、学生)

 

【概要】

小中学生の時に肉体的・性的・精神的虐待を受けていた場合の氏名変更の許可が認められた事案

 

【相談前】

 Aさんは、小学生から中学生までの間、親、兄弟、親族からの肉体的暴行、精神的暴行、性的虐待を受けていました。Aさんは下の名前を呼ばれながら、虐待を受けていたため、自分の名前を耳にするたび、頭痛、動悸を感じ、苦しんでいました。また、氏についても親や親族からの虐待を受けていたので、変更を希望されていました。

 Aさんは、現在、ある職業に向け、進学するために勉強に励んでいました。そして、進学前に現在の氏・名の変更をし、新たな氏・名で進学することを強く希望されていました。Aさんは、様々な弁護士に相談したものの、なかなか受任してもらえる事務所が見つからず、当事務所にたどり着きました。

 

【植田総合法律事務所の対応・結果】

 Aさんが虐待を受けていたのは、小学生から中学生までであり、かつ虐待が身内によるものであったため、証拠収集で困難を要することが容易に想定できました。しかし、Aさんの強い思いに少しでも力になりたいとの思いで、受任しました。

 警察、行政機関等へ虐待に関する資料を可能な限り集めました。そして、それらの証拠をもとに、これまでの経緯、本件では氏・名の変更が認められるべきであることを丁寧に説明し、家庭裁判所に氏・名の変更申立書の提出を行いました。

 審問手続きでは、裁判所から、一度、本件の申立の取下げを勧められ、審判手続を進めても認めないとの厳しい言葉がありました。当職は、本件は氏・名の変更されるべき事案であり、必要性、相当性がある事案であること等を強く主張しました。

 審問手続きの約2週間後、結果、Aさんの氏・名が変更を許可する旨の決定がでました。

 

【その他、コメント】

 氏・名の変更手続きは、共に裁判所の許可が必要となります。氏の変更は戸籍法107条1項の「やむを得ない事由」があるときに認められます。また、名の変更は同法107条の2の「正当な事由」があるときに認められます。離婚の際に母親が元の氏に戻り、子どもも母の旧姓を名乗る場合に氏の変更の許可をもらうことがよくあります。そのほか、珍奇・難解・難読の場合や社会生活上支障がある場合、長年の通称使用の場合などがその例として挙げられます。

 本件では、Aさんの受けた虐待の事実及びその後の影響等が「やむを得ない事由」「正当な事由」にあたるかといったことが問題となりました。また、虐待の事実をいかに立証するかも問題となりました。

 Aさんは、通称を使用して、本名を名乗ることを回避することも可能でした。しかし、学生の場合、学校内での通称の使用を認めてもらえるところは多くはないようです(実際に本件でも裁判所の許可等公的な書類がないと不可とのことでした。)。

 本件は、決して十分な証拠資料が集まったとは言えませんでしたが、可能なかぎりやってみようを合言葉に、一緒に手続きを進めてきました。Aさんの強い気持ちが、氏・名の変更を実現したと考えています。